PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?スタートアップが見るべき指標を紹介 - Mixpanel
グロース

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?スタートアップが見るべき指標を紹介

Last edited: 12月 23, 2021
Serene Ho

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは、提供しているプロダクトやサービスがマーケットのニーズに合っている状態のことを意味します。PMFとは何か、見るべき指標と測定する方法、そしてPMFを達成する方法について説明します。

スタートアップ業界では、PMFなしでは、どんなに優秀な創業者であっても事業は失敗してしまうと言われています。DropboxやAirbnbなどの数多くのスタートアップを輩出してきたシードアクセラレーター、Y コンビネーターは、2005年に設立されてすぐに「Make Something People Want(人に欲しがられるものを作れ)」というスローガンを掲げました。

また、マーケットデータから得られるインサイトを提供しているCB Insights社が行った2019年の調査では、「市場のニーズがない」ことが原因で、ほとんどのスタートアップが失敗しているという結果が出ています。

直感的には納得しやすいと思います。そもそも、サービスを欲しいという人たちに対して価値を提供しなければ、プロダクトやサービスを売ることはできません。しかし実際には、PMFという概念が浸透してきているのにもかかわらず、PMFができているのかどうかを確実に測定し、トラッキングし、データドリブンに最適化していくことは、とても難しいと言われています。

そこで私たちは、業界や場所を問わず、PMFを何度も目の当たりにしてきた専門家たちにアドバイスを伺い、本記事にまとめました。

PMF(Product Market Fit, プロダクトマーケットフィット)とは

PMF(Product Market Fit, プロダクトマーケットフィット)とは、プロダクト(Product)が適切にマーケット(Market)のニーズに合っている(Fit)態のことを意味します。日本語では「製品市場適合度」とも呼ばれます。

しかし、PMFの定義は曖昧で、そこに到達するための道筋はさらに曖昧です。PMFができたと「感じる」ことは、考えただけでわくわくしてしまうようなことですが(つまり、人を雇ったり、成長のために投資したり、組織文化を作ったりすることに集中することができます!)、スタートアップの真の課題である「問題解決」から目をそらしてしまうと、将来的に大きなリスクが発生してしまいます。

イスラエル在住のスタートアップ・アドバイザーであり、Viber(2014年に楽天が買収、現在はRakuten Viber)の元シニア・プロダクト・マネージャーであるイダン・ダドン氏は、このように語ります。「非常に多くのスタートアップが、”正しい”プロダクトではなく、”完璧な”プロダクトを実現しようとして、失敗します。そういう私も、同じようなミスを経験していて、マーケットの需要ではなく、プロダクトに集中しすぎてしまったことがあります。」

またシンガポールに拠点を置くアクセラレーターStartupX社のCOOであるレイモンド・ドリズミー氏は、Twitchの共同創業者であるエメット・シーア氏の説明するPMFの表現がわかりやすいと言います。「彼は、PMF(プロダクトマーケットフィット)を見つけることは、坂道で巨大な岩を押すようなものだと言っています。気が散ったり、作業をやめたりすると、巨石は坂道を転がり落ちてしまうかもしれません。PMFに到達したとき、それは丘の頂上に到達したときです。突然、あなたが巨石を押すと、巨石は簡単に、勝手に動き出します。少しの力で前に進むことができます。ずっと来てほしいと思っていたユーザーが、自分たちからあなたのところにやってきます。会社が処理できないほどの需要が発生すると言われています。」

PSF(プロブレムソリューションフィット)からPMFへ

ここで、PSF(Problem Solution Fit, プロブレムソリューションフィット)について触れましょう。PSF(プロブレムソリューションフィット)とは、ユーザーが抱えている問題(Problem)に対して、解決策(Solution)が合っている(Fit)ことを意味します。

たとえば、引っ越しする子持ちの家族について考えてみましょう。ある家族が新しく家を購入し、引っ越しを行うとします。小さい子どもが3人いて、そのうち2人はまだ乳幼児で、長男もいつも走り回っていて活発です。家は大きく、引っ越しの荷物運びにはトラックが必要そうです。引っ越しをする夫婦は、「引っ越しをしたいが、荷物は多く、子どもの世話もあって、引っ越し作業をする時間も余裕も体力もない。また荷物を運ぶためのトラックの運転をする免許もないので、荷物を持っていけない」という問題を抱えています。

ここで、近所にキッズシッターサービスをオプションで提供している引っ越しサービスがあるとしましょう。この引っ越しサービスは、子持ちの家族のために、保育士と連携したキッズシッターサービスをオプションで提供しています。また当然、トラック運転手もいますし、重い荷物を運べる人員も提供されます。このサービスを利用すれば、子持ち夫婦は、子どもを引っ越しの日に保育士に預けて、何を持っていき、何を捨てるかという意思決定に集中することができ、トラックへの搬入・運搬・搬出すべてを体力のある人にお願いすることができます。

このように、誰かが抱えている問題に対する解決策となるサービスが、しっかりと問題の解決策になっていることを、プロブレムソリューションフィットと言います。それでは、具体的にPSFの流れについて見ていきましょう。

市場調査・市場の発見

まず、どのようなマーケットニーズがあるのかを調査しましょう。どんな需要があって、それに対して現在、どのようなサービスが提供されているのでしょうか。物に溢れている現代では、考えられる大抵の問題に対して、既に解決策となるサービスが提供されています。まずはマーケットの状況を理解し、競合となるサービスを把握し、競合とどのように違うサービスを提供できるのかを考えます。

たとえば、UberやLyftのようなライドシェアサービスは革新的なサービスですが、本質的にはタクシーのマーケットに既に存在していた「目的地へ車で連れて行って欲しい」ニーズを、タクシーではなくライドシェアリングサービスで解決した、と言うことができるでしょう。その際に、タクシーの乗車金額がいくらなのか、タクシー企業は全国にどの程度あって、大手はどこなのか、どんな法規制があるのか、などといったことをまず把握することが重要です。

またマーケットなどのデータだけではなくユーザーインタビューなどを通じた定性的な情報も重要です。たとえば、ユーザーはタクシーの乗車体験に満足しているのでしょうか?もしかしたら、サービスに対して金額が必要以上に高すぎると心の中で思っている人が少なくないかもしれません。

MVP(Minimum Viable Product, 必要最小限の製品)を開発する

MVP(Minimum Viable Product, 必要最小限の製品)とは、ユーザーのニーズを満たすことができる必要最小限のプロダクトやサービスのことを意味します。必要最小限の機能しか開発されないプロダクトやサービスなので、必要ではないと判断された機能を持たず、最低限の工数で製作されたプロダクトです。

たとえばUberやLyftでいえば、(違法でない限り)まずはあなた自身が運転する、電話一本で呼べる格安乗車サービスを地域限定で提供する、などが言えるでしょう。その次に、格安金額で乗車リクエストを出すことができ、リクエストを送ると運転手が来るアプリを地域限定で提供する、などがあげられるでしょう。

PMFを証明する

プロダクトができたら、PMFを目指して需要を探っていきます。MVPは全くPMFしないかもしれませんし、軌道修正していく必要があるかもしれません。最初からしっかりとPMFすることは多くないので、柔軟にマーケットからのフィードバックを活用し、プロダクトを改善していくことが重要です。

「PMFがどのようなものであるかを事前に定義し、投資家と情報を共有しておくことが重要です。いつまでに事業を成長させるのか、投資家との間で事前に調整しておき、途中で喧嘩にならないようにしましょう。PMFを明確に数値化できる指標があれば、あなたとあなたのチームが進捗状況を確認することができます。」 – ショーン・エリス( GROWTHHACKERS創業者兼CEO)

「よくある間違いに、PSFとPMFを混同することがあげられます。一般的にサービスやプロダクトの初期段階(MVP)で、少数のアーリーアダプター(新しいサービスや商品が好きな人たち)が使ってくれたときにPMFだと思われがちですが、それはPSFの段階です。初期段階のスタートアップ企業が、これをPMFと言い換えてしまうことがあります。これはPSFしているのであってPMFはできていない状態なので、ここで成長投資してしまうと、後で問題となります。」 – ジェイコブ・ジョージ(ファウンダーズファクトリー グローバルプロダクトコーチ)

PMFのために重要な6つのポイント

PMFを測定するためのフレームワークは、プロダクトのカテゴリーや業界によって異なります。 その中でも、多くの専門家が指摘したのが、レニー・ラシツキーの「定義マトリックス」で、リテンション(維持)、グロース(成長)、プロフィット(収益)を最適化するというものです。プロダクトがこの3つの要素の重なるポイントにあると、PMFが高いと言えます。

またPMFを測定するために、ほとんどの専門家が同意する共通のテーマ、要点、ベストプラクティスがあります。それらを以下にまとめてみました。

1.リテンション以上に重要なものはない

リテンション(継続率)は、サービスの価値を示す重要な指標であり、スタートアップのライフサイクルを通じて、他のどの指標よりも分かりやすく、かつ決定的な指標だと専門家たちは口をそろえて言います。

Credit: Brain Balfour

「リテンション率は、継続して利用したかどうかの行動データの指標であるため、PMFを測るのに最適な指標です。具体的には、リテンションカーブの最終地点に注目してください。リテンションカーブがゼロになってしまうと、PMFがないことになります。PMFのためには、リテンションカーブがゼロではないリテンション率の割合まで、平坦になるようにします。この割合が高ければ高いほど、PMFのレベルが高いと言えます。」  – ダン・オルセン(プロダクトマネジメント・トレーナー、『LEAN PRODUCT PLAYBOOK』の著者)

「PMFを検証するには、ユーザーが実際にプロダクトを試し、その価値を体験することが必要です。PMFの最良の指標は、プロダクトを利用したユーザーのリテンションです。」 – ショーン・エリス(グロースハッカーズ創業者兼CEO)

自社プロダクトのリテンションをどのように定義するか、必ず決めて、それを守りましょう。リテンションを測定するためには、プロダクトの「価値指標(Value Metrics)」をしっかりと理解する必要があります。Yコンビネーターのパートナーであるグスタフ・アルストマは、次のようなステップを紹介しています。

  1. ユーザーがプロダクトを利用し、その価値を体験したことを示す指標を特定する
  2. その指標のリピート回数を測定する(どのくらいの頻度でユーザーは価値を体験しているのかを測定する)
  3. 今度はリテンションを測定し、フラットなリテンションカーブを目指す

改善のための基準を確立したら、リテンション指標を動かすために様々なテストを行うことができます。例えば、アクティベーションの改善や、よりターゲットを絞った獲得戦略を実行する、離脱したユーザーが戻ってくるようにする、などがあげられます。

Mixpanelを利用すれば、リテンションデータをトラッキングし、リテンションカーブの状況を正確に把握することができます。リピート率やリテンションのデータから得られるインサイトを利用して施策を考案し、施策の結果数値がどう動いたのかなどをわかりやすいダッシュボード上で、視覚的に把握することができます。

2.他にも注目すべき指標を見落とさない

リテンションは重要ですが、スタートアップのライフサイクルの中では、わかりやすさに違いがありつつも、他にも気にすべき指標があります。「いい感じになってきた…」という感覚的なものから、数字で定量化できる、わかりやすい指標まであります。

たとえば、プロダクト開発前や、プロダクトの初期段階では、多くのスタートアップ企業において、定性データが貴重な先行指標となると言われています。

ショーン・エリスが開発し、スーパーヒューマン(Eメール管理サービス)が採用したフレームワークでは、チームがユーザーに「プロダクトを使えなくなったらどう思いますか」と質問し、”とてもがっかりする”と答えた人の割合を測定します。従来のNPS調査(ネットプロモータースコア、顧客が他の人にサービスを紹介したいと思うかどうかを示す指標)よりも洗練されたこのモデルでは、サービスを愛用してくれているユーザーをさらにローヤルユーザーにすることができ、さらに、まだ完全には受け入れられていないユーザーの意見を集めることができます。

そして、このようなユーザーのインサイトを集め、プロダクトを愛用してくれるユーザーたちがいることを確認したこと自体が、PMFの正しい方向に向かっていることを示す指標となるのです。

3.PMFは度合いであって、白黒はっきりしたものではない

リテンション率の高さなどは、PMFを示す非常に重要なシグナルですが、ある閾値に達したからといって花火が上がったりするわけではありません。また、自分の指標があるべきところに達していなくても、落胆する必要はありません。

むしろ、データに含まれる様々なPMFの指標を理解し、それらを積極的に改善する方法を探し、実行することに集中しましょう。

4.重要と判断した指標を明確に定義し、指標の改善に集中する

専門家が口を揃えていっていたことの一つに、「競合他社との比較に執着しないこと」というものがありました。競合他社との比較をせず、自社のプロダクトの「ノーススターメトリクス(重要となるただ一つの指標)」ともいうべき重点指標(多くの場合、リテンション関連)を見つけ出し、それをどのように改善するかにエネルギーを費やしてください。多くのスタートアップ企業がひしめく中で、際立つためには、何かひとつのことで本当に優れている必要があります。

そして競合他社を調査する際には、どのような活動が自社のノーススターメトリクスを向上させるか、念頭において調査してみてください。

5.PMFを達成したとしても、終わりではない。目標は常に変わるが、それでいい。

PMFを維持するには、継続的な改善が必要です。マーケットは(かつてないほどの速さで)変化しており、企業が100人のユーザーから1000人のユーザーに成長するにつれ、PMFの指標も変化していきます。トライブキャピタル(サンフランシスコのベンチャーキャピタル)のアージュン・セスィ氏は、「企業が成長すると、ユーザーベースがアーリーアダプターから、レイトアダプター(より保守的な層)、ラガード(保守層)へと拡大するため、PMFは一般的に悪化します。獲得コストは増加し、収益の伸びは鈍化し、ユーザーグループのリテンション率は低下します」と述べています。

カスタマーデータプラットフォームを提供するSegmentは、初期に成功した後のPMF(プロダクトマーケットフィット)を見つけることについても多くのことを語っています。Segmentのような確立された企業の場合、課題となるのはPMF後(例えば、企業が市場シェアを拡大した後にリリースする新製品)も、どうやってマーケットに合わせたものにするのか、という点になります。マーケットに合わせて最適化しなければならないという緊迫感がないと、最も差し迫ったユーザーの抱えている問題やそのソリューションを何が何でも優先することを忘れ、集中力を失って新しい分野に手を出してしまいがちです。

最終的には、PMFは常に注視する必要があり、事実に基づいたデータとインサイトを確認し、フィードバックを得て改善するというループを確立しなければなりません。PMFが明確になったら、ユーザーのセグメンテーションに注力し、常に次のリリースをどうするのか、意識してください。

6.PMF前にむやみに投資しない

Y コンビネーターの元社長であるサム・アルトマンは、有名なブログ記事の中で、「以前にも言ったことがありますが、繰り返し言います。あまりにも多くの起業家が、成長に集中するタイミングが早すぎたために、会社を停滞させてしまっています。全く成長すべきではないと言っているわけではありません。たとえ初期段階であっても、ユーザーが使いたいと思うようなプロダクトにしていくことで、ユーザーが何を求めているのか、より深く理解することができます。」といい、彼はこう続けます。

「人々に愛されるプロダクトを作る前に成長を重視しすぎると、穴の開いたバケツから水が漏れ続けるような問題が発生します。ユーザーを引き込むことはできても、留まってもらえず、二度と戻ってきてもらえないのです」。

結論

PMF(プロダクトマーケットフィット)を探す旅がどれだけ進んでいても、データの収集から始めて、規模を拡大する前に指標とフレームワークを構築し、自分自身と投資家に率直に話しましょう。

Mixpanel のようなプロダクト分析ツールは、プロダクト開発の業務から「勘や感覚ベースの考え」を排除し、データをもとにした意思決定を可能にします。

私たちは、多くのスタートアップ企業がずっと困っていることとして、よく資金調達に苦労しているということを発見しました。出資を検討している投資家は、長期的に見るべき指標は何かと聞いてきます。それに対して、過去90日間(Mixpanelの旧無料プランで見ることができた期間)だけのプロダクト指標を投資家に見せ、90日以前の数値を推定してもらう、というのは現実的ではありませんでした。

同時に多くのスタートアップ企業が、データから得られるインサイトを簡単にチーム全体に共有でき、メンバー全員が信頼できるデータをもとに素早く意思決定できる体制を整えておきたいと考えていました。

こうした背景から、私たちは無料プランのデータ履歴制限を解除することにしました。これによって、期間を気にせずにパフォーマンスの改善度を見せたり、リテンションを確認したり、いろんなことができるようになりました。アカウント数の制限も撤廃したため、新しいチームメンバーが入ったとしても、心配することなくアクセス権を付与することができます。

優れたプロダクトマネージャーは、ユーザーの意図(人々の思っていること)とユーザーの行動(人々が実際に行うこと)に関するデータをもとに、データドリブンな意思決定をしながら、ユーザーにとって必要不可欠なプロダクトを創造してくことができるのです。