ユーザー採用戦略(Product Adoption Strategy)を構築して測定する方法

オンボーディングと呼ばれることもあるユーザー採用とは、新規ユーザーがプロダクトやサービスに慣れてきて継続して利用することを決めるプロセスのことです。ユーザーは、食品を注文する、ビジネスを立ち上げる、といった各自の目標を達成するのに役立つ場合にのみプロダクトを採用します。

ユーザー採用率が重要な理由

ユーザー採用率の高い場合、プロダクトの利用を断念するユーザーの数よりプロダクトを採用するユーザーの数の方がはるかに多いことを示します。これは、企業が新規ユーザーを非常に効率よく獲得していることを意味することになります。

例えば、オンライン広告を通じてユーザーを獲得するモバイルゲーム会社について考えてみます。広告をクリックする見込みユーザーがゲームを気に入りゲームを継続してプレイした場合、会社は当初に行った広告投資からより多くの収益を上げることができます。

このように高い効率性は高い収益性に結び付きます。例えば、アプリの粘着度または定着度といったユーザー成長率を測定する一般的な指標は、単に企業がユーザーを失うより速いペースでユーザーを獲得していることを示しているだけです。

ユーザー採用率が高い企業は次のようなメリットを得ます:

  • Cost Per Acquisition: CPA(顧客獲得単価)が低い
  • リテンション率が高い
  • マーケティングROIが高い
  • Customer Lifetime Value: CLV(顧客生涯価値)が高い
  • マーケティングコストとリテンションコストが低い

リピート顧客からメリットを得る企業は、高いユーザー採用率からメリットを得ます。例えば、高い採用率は次のような効果をもたらします:

  • SaaSを購入する委員会や意思決定者が、サブスクリプションを更新する可能性が高い
  • 金融サービスの利用者はアプリを継続利用する可能性が高い
  • コンシューマーテックの利用者はアプリを中心に習慣を確立する可能性が高い
  • メディア/エンターテイメントの閲覧者はサイトを繰り返し訪問する可能性が高い
  • 小売/ECの買い物客は繰り返し購入する可能性が高い
  • 電気通信の利用者はチャーンする可能性が低い

ユーザーが価値を確実に見出して、利用継続し、採用するように、企業はプロセス全体を通じてユーザーを先導する必要があります。そのためには、ユーザー採用戦略が必要になります。

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一般的なユーザー採用戦略

ユーザー採用戦略の目的は、ユーザーが各自の目標を達成できるように手助けすることです。つまり、調査を実施して、ユーザの動機、ニーズ、環境、信念、苦情、そして最も重要であるユーザーが採用しない理由を理解します。

プロダクトが高過ぎるという認識、複雑すぎるという感情、競合プロダクトの方がニーズに適しているという印象、といったチームが予想しないような理由でユーザーはチャーンすることが多いです。

チームは次のような等式に基づいてユーザー採用率の改善について考えることができます:

採用 = 価値 / 労力

サービスの価値がコストを上回る場合、採用率は高くなりユーザーが利用し続ける可能性は高いです。労力が価値を上回る場合、ユーザーは利用を断念します。採用率を高めるために、チームは価値を増やすか労力を減らす、あるいは理想としてはその両方を行うことができます。

プロダクトの価値を高める方法

ユーザーが希望するものをより多く提供するために、チームはマーケティングやプロダクト機能に変更を加えることができます。マーケティングチームは、より高度な機能へのアクセスなど、プロダクトの価値を高める、割引、キャンペーン、景品などを提供することができます。

プロダクトチームは、プロダクトをより有益なものにする新機能をローンチすることができます。例えば、EC小売店は機械学習アルゴリズムによって提供されるより強力な提案機能をローンチしたり、家族のために複数のプロフィールを追加することを許可するストリーミング動画サービスを提供したりすることができます。

価値の認識は価値そのものです。Amazonの有名なプライム会員プログラムは、いわゆる「送料無料」を年会費で相殺する形なのですが、配送ポリシーに対する肯定的な見方が8,000万人以上の会員獲得を可能にしています。

採用に関わる軋轢を減らす方法

すべての業界における採用の最大の障壁の1つは、ユーザーが新しいことを学ばなければならないことです。新しいワークフロー、アプリのインターフェース、ダッシュボードなど、学ぶには精神的努力が必要になります。ユーザーは容易に疲弊し、慣性の法則に従い、すでに知っているサービスを利用し続ける傾向があります。

ユーザーが新しいことを採用できるようにするため、チームは、ナビゲーションメニュー、遷移アニメーション、プログレスバーなど、ユーザーが慣れ親しんでいる一般的に受け入れられているデザイン規則に従うことで、障壁を低くすることができます。サービスが親近感を覚えるものであれば、学ぶことは少なくて済みます。

ユーザーアナリティクスを使用すれば、チームは、新規ユーザーオンボーディングファネルを見直して、ユーザーが問題に直面している領域を特定することができます。大きなドロップオフのある領域や多くのユーザーがアプリを終了している領域は、何かが上手くいっていないのかもしれません。 ある海外のP2Pショッピングアプリがその新規ユーザーリファーラルファネルを調べたところ、ユーザーが特定のランディングページに到達した直後に高いドロップオフが確認されました。コピーを書き直すことで、チームはリファーラル成功数を2倍にすることができました。

また、チームは、サーベイ、インタビュー、ジャーニーマッピング、タスク分析などを介してファーストパーティデータに基づく顧客リサーチを実施することができます。そうしたリサーチでは、UXリサーチャーは顧客がプロダクトを日々利用する様子について調査します。

採用手順の全体がユーザーの継続利用を頓挫させる場合は、次のものを提供することを検討します:

  • ウォークスルーアニメーション
  • オンボーディング動画
  • アプリ内メッセージ、プッシュ通知、メールを介したオンボーディング教育
  • FAQやカスタマーヘルプポータル
  • 満足度を見極めるためのユーザー調査

SaaSソフトウェアの採用戦略

SaaSソフトウェアの購入者は一般的な消費者とは大きく異なります。多くのSaaSソフトウェアの購入、導入、オンボーディングは、消費者がiTunesから単にダウンロードするだけで済むアプリに比べてはるかに複雑です。

CRMシステムを変えたい大企業を例に挙げて説明します。別のCRMに切り替えるには、チームは組織内の数千人のユーザーの習慣を止めさせ、IT部門が数百時間を費やして新しいソリューションを導入して、転送できない何テラバイトもの情報を恐らく失うことになります。意思決定に関与している関係者が5人~7人はいると思われるので、決定を下して導入するまで3ヵ月~9ヵ月かかる場合があります。

そのため、ベンダーが購入者の購入プロセスと導入プロセスを十分に理解していることが重要です。企業は次のような方法でソフトウェア購入の計画を立てます:

  • オールインワン型ロールアウト:古いサービスの使用を止めて新しいサービスの使用を始めます
  • 並行導入:両方のサービスを並行して実行しながら切り替えます
  • 段階的導入:いくつかの段階に分けて新しいサービスをローンチします

企業がサービスを採用できるように、SaaS会社は実地トレーニング、プロジェクトマネージャー、テクニカルエキスパート、自助リソース、開発リソースなどを提供しなければならないことが多いです。しかし、SaaSの購入者も人間であるので、リサーチが重要になります。

「当社のプロダクトを使用してお客様が成功を収めることほど重要なことはありません」とMarketoのリテンションマーケティング担当ディレクターであるJanet Dulsky氏は述べています。「私のチームは、多くの時間を費やして、当社のプラットフォームをどのように使用している(または使用していないか)についてのデータを収集するためにお客様にインタビューします。そうしたインサイトに基づいて、経路、媒体、内容などすべてのことについての決定を下します。お客様のニーズを満たして成功への道を進めるように常に努力しています」

ユーザー採用戦略の成功を測定する方法

ユーザー採用率を高めるために、チームはそれを測定しなければなりません。ユーザー採用率を測定するには、次の7つの手順に従います:

「目標を選ぶ」

まず、チームは自分たちにとって採用率が何を意味するかを確認しなければなりません。ニュースサイトの場合、採用率はアカウントの作成を意味するかもしれません。出会い系アプリの場合、最低数以上のメッセージを送信することを意味するかもしれません。

目標を達成するために、何を変える必要があるかを見極めます。

次の手順は、「仮説を立てる」です。採用率の低いユーザーと高いユーザーのギャップは何か?十分な価値がないことが問題なのか、それとも労力をかけすぎていることが問題なのか?どのように対応することができるか?

「指標を選ぶ」

どの指標が高い採用率を示すか?一定の訪問数、アカウントの作成、それとも初回支払の完了か?チームは、例えば高い採用率を示す複数の指標をまとめた「フル採用」という新しいKPIを作成することができます。

指標を追跡するにあたっては、ユーザーアナリティクスが重要となります。ほとんどのデジタルプロダクトは、それ自身でレポートを生成したり、ユーザーイベントを個々のユーザーに結び付けたりするようには設計されていません。しかし、ユーザーアナリティクスは、それらすべてを行うだけでなく、ユーザージャーニーを最初から最後まで明らかにします。ユーザーアナリティクスを使用することで、チームは次のことを追跡できます:

  • ユーザーファネル
  • ユーザージャーニー
  • ユーザーのコホート

「追跡プランを作成する」

チームはプラットフォーム内のどのイベントが追跡する指標に関連しているかを正確に定義しなければなりません。通常、そのためにチームは、開発チームが導入に向けたマップとして使用するExcelスプレッドシートにまとめます。

追跡プランには次のような情報を含めます:

  • 追跡するイベント
  • イベントの構文規則と命名規則
  • イベントを追跡する頻度
  • 導入スケジュール
  • 追跡ツール

ユーザーアナリティクスツールに制限がある場合、早急に確認しておくことが重要です。例えば、重複ユーザーを把握できない、複数のデバイスを利用するユーザーを追跡できない、といったことです。

「基準指標を取得する」

変更を加える前に、ユーザー採用率の変化による影響を数量化できるように、チームは変更実施前の写真といった基準となる測定指標を確認しておく必要があります。

「変更を実施する」

準備が整ったら、チームはユーザー採用率を高めるためのマーケティングキャンペーンを実施する、またはプロダクト機能を変更します。慎重に行うのであれば、どの変更が最も効果があったかを検証するために、1つずつ変更についてA/Bテストを実施します。一度に複数の変更を行った場合、採用率は改善するかもしれませんが、どの変更がプラスの影響を与えたかが分からないため、プロセスにおけるユーザーやプロダクトについて何も理解することができません。

「再度測定する」

採用率の変更がインパクトをもたらしたか?ユーザーはプラットフォームをより長く使用しているか、目標をより早く達成しているか、エンゲージメントを高めているか?そうでない場合、引き続きテストをします。そうであったとしても、引き続きテストをします。ユーザーのアクイジションとリテンションは終わりなき旅であり、終点ではありません。優れたチームは決して改善する方法を探ることを止めません。

採用は、デジタルプロダクトの最終的なテストです。忙しいユーザーが問題を解決してくれるのでお金をかけるだけの価値のあるサービスだと判断した場合、そのユーザーはサービスを利用し続けます。定着度の高いプロダクトは、高いリテンション率、低いアクイジションコスト、そして高い顧客生涯価値につながります。 いずれも収益と成長をもたらしてくれる要素です。ユーザー採用戦略を用いることで、ユーザーの目標達成が企業の目標達成そしてプロダクトの長期的成功に寄与するように、どの業界のチームもユーザー採用率のデータを活用できるようになります。

貴社に適したKPIを選択する方法について説明します。

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