プロダクトの「グロースハック・チャンス」を見つける方法 - Mixpanel
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プロダクトの「グロースハック・チャンス」を見つける方法

松陰 ウルフ 松下村塾株式会社 CEO

私はアプリやプロダクトの成長を手伝うグロース・カンパニーの経営者として、様々なサービスの成長に貢献してまいりました。クライアントと新しいプロジェクトを始める時、まず我々が必ず最優先することは何でしょうか。それはプロダクトのどこに「グロースハック・チャンス」、つまり「簡単に大幅改善する余地のある部分」、が眠っているかをつきとめる事です。

ただ、このグロースハック・チャンスを見つけるには、一般的な企業に採用されているよくあるデータ解析方法(グーグル・アナリティクス、BIダッシュボード、SQLクエリ、ユーザーインタビュー等)だけでは足りません。ユーザーの全ての行動をを定量的に可視化できるMixpanelのような「プロダクト・アナリティクス」ツールが必要不可欠です。

今回の記事では、どのようにプロダクト・アナリティクスを利用してグロースハック・チャンスを見つけることができるか、そしてチャンスにどのようなグロース施策を行なったかを実例で紹介します。

「誰が」・「どこから来て」・「何をしたか」

グロースハック・チャンスの分析にはまず「誰が」・「どこから来て」・「何をしたか」の統計データが必要です。

  • 「誰が」の情報とは人口統計学的なデータです(年齢・性別・OS等)。これは一般的にDemographic Data(通称:デモグラ)と呼ばれております。デモグラの多くはありがたいことにアナリティクス自体が自動で取得してくれます(デバイスタイプ、市区町村、国、言語など)。ただ、性別や年齢など、欲しいけど自動で取得されない情報はサービス内でユーザーから取得し、その情報をアナリティクスに送る必要があります。
  • 「どこから来て」はどこの媒体またはどの広告から来たかの情報です。これはAttribution (アトリビューション)と呼ばれております。アトリビューションの多くはウェブサービスなら自動で取得してくれますが、アプリの場合は広告プラットフォームのSDKを直接アナリティクスと連携させる必要があります。
  • 「何をしたか」とはプロダクト内のユーザー行動データです。ここは、我々がこれから行う分析にとって1番重要な統計データであり、プロダクト・アナリティクスの強みです。例えば「コメントをした」という行動をアナリティクスで測ることにより、コメントしたユーザーはしないユーザーと比べてどれほどコンバージョン率(成果達成率)の差があるのか、または何回コメントをすると定着率が上がるのかが把握できます。

今までの解析ツール(グーグルアナリティクスや広告プラットフォーム等)は「誰が」と「どこから」のデータ統計は得意だっだのですが、肝心の「何をしたか」が欠けていました。また、過去の解析ツールはこの「誰が」・「どこから」・「何をしたか」の3つのデータ統計を一つのツールに集約できなかったため、解析がどうしても浅くなっていました。真のインサイトに辿り着くことができていませんでした。そこで10年前ほどに、「プロダクト・アナリティクス」というジャンルが誕生したわけです。ユーザーの行動を追い、ユーザーに纏わる統計データを全て集約し、様々な計算方法とチャートが一つのツールにまとまったからこそ、プロダクトの深い理解と課題の謎解きがし易くなりました。

「誰が」・「どこから来て」・「何をしたか」。グロースハック・チャンスは常にこの3つのどれかに隠れています。もちろん、3つのブレンドの可能性もあります。

今回は弊社のクライアント「TELLER」を参考にして例をいくつか見ていきましょう。

1. 課金施策:無料トライアルのキャンセル改善

TELLER」はオリジナル小説を読んだり書いたりできるアプリを提供しています。アプリの課金モデルは無料トライアル付きのサブスクだったのですが、高いトライアル解約率に悩ませられていました。

弊社は先方と一緒に、課金率を妨げずにトライアル解約率を低下させるという目標を掲げました。

まず、行動傾向として最初に見つかったのが、無料期間が7日間あるにも関わらず、課金した同じ日にトライアル解約を申し込みをするユーザーが大半を占めていたことでした。

この課題を解決するよう、弊社がリデザインを担当し、数回に渡り課金訴求画面のABテストを行いました。結果、お試し期間終了前に通知を送るというUIで安心感を与えることで初日のトライアル解約率を下げ、総合トライアル解約率を53%下げることに成功しました。多少の調査と施策を試し、ほんの数週間でTellerに毎月数百名分の課金をもたらすことができました。

ただただ「総合トライアル解約率を下げる」という情報だけで計画を立てていたら、同じ施策には決して辿り着かなったと思います。ユーザーの行動を分析して、初日に1番キャンセル率が高いことに気づいたからこそ見つけることができた最善策でした。

2. エンゲージメント施策:ユーザーのセッション終わりの手前の行動を見る

私がグロースハック・チャンスを見つける際に活用している裏技があります。その一つが、セッション終わり手前の行動を見る事です。

どのプロダクトも多くのユーザーが割と同じ箇所でセッションを終了していることが多いです。そして、その画面の課題を集中的に解決することで、反対にセッションを終了せず、続けさせることも可能です。

Mixpanelでセッション終わり前の行動を見たい場合は、Flow機能のイベントにSession Endを選択し、その上に2 steps beforeを入力します。そうすればセッション終わりの2ステップ前までを見ることができます。

このSession Endの手前のイベントが全てグロースハックの可能性があるエリアです。

TELLERを例に見てみましょう。

TELLERではSession End手前の中でも「ストーリー終わり」画面が目立ちました。深く調査した結果、多くのユーザーがここの画面にいる時はストーリーを読み終わり、満足したから閉じるケースがほとんどでした。それだけでなく、BEFOREの画面を見ればわかると思いますが、次に繋げるアクション訴求はどこにもないため、ユーザーが「もういいかな」と思いやすい画面でもあります。弊社はこの画面に目を光らせました。

誰かの作品を読み終える程見入ったのであれば、その作者の他の作品にも興味を持つのは当然です。そこでこちらの画面デザインを変更し、「作者の他の作品」セクションを表示する機能をつける改善を行いました。

その結果、本の平均閲覧回数がなんと3倍近くに増えました。

そして平均の底上げのみならず、「作者の他の作品」セクションはサービス内で本をスタートをする場所の総合1位になりました。

その他グロースハック・チャンスの分析指標 ~ 課金編 ~

上記の2件以外にも、グロースハック・チャンスを分析できる指標はまだまだあります。参考例として課金周りの分析箇所の候補を箇条書きしました。ぜひ貴社サービスで分析してみてください。

  • OS別、モバイルvsデスクトップ別、画面のサイズ別の課金率
  • 課金までかかった時間の分配
  • 課金したユーザーの何割が課金前に「値段」ページを見たか?
  • 課金したユーザーの何割が課金前に「よくある質問」ページを見たか?(そしてどの質問を見たか?)
  • 課金ユーザーの中のエンゲージメントの低い課金ユーザーの割合
  • エンゲージメントの高い課金ユーザーとエンゲージメントの低い課金ユーザーの違い (高い方は価値のある機能や課金ポイントの価値を教えてくれる)
  • 定着歴の長い課金ユーザーと浅い課金ユーザーの違い(長期定着の秘訣を探れる)
  • 定着率のLTV別ユーザーセグメント別(SaaSのように複数のプライシングプランがある場合、シンプルにそのプラン別で分ければ良い)
  • 大事な「行動」を行なった回数のLTV別ユーザーセグメント別で比較
  • 大事な「行動」を行なった割合をLTVユーザーセグメント別で比較(例:無料ユーザーはチュートリアルをスキップする傾向が高いが、中LTVユーザーと高LTVユーザーはチュートリアルを見る割合が高い。故、定着率を考慮しつつチュートリアルを強制することを試す価値がある)
  • 課金額によって定着率は異なるか?
  • 課金施策別の定着率への影響

いかがでしたでしょうか?ぜひこれを機に、今まで以上に深く貴社のユーザーとプロダクトのデータを深掘りし、ぜひグロースハック・チャンスを見つけてください。

ウルフ松陰について

プロダクト・グロース カンパニー 松下村塾株式会社 CEO。デジタルサービスのデータ解析、プロダクトデザイン、グロース施策を専門とする。Google, Tinder, Tellerなどの国内成長に携わる。2017年プロダクトデザイナーとしてストアカのデザインでグッドデザイン賞を受賞。2020年までマッチングアプリ「Hatch」を共同創業、CEOを務める。2019年に都内最大の国際テックコミュニティ「Tokyo Tech Meetup」を共同設立。2014年までデジタルガレージにてベンチャーキャピタリストを務める。国際基督教大学(ICU)卒。Twitter: https://twitter.com/shoin_shoka