顧客エンゲージメントとは?その意味と見るべき指標
顧客エンゲージメントが重要な理由
エンゲージメントの高い顧客は、プロダクトやサービスを継続して利用してくれるだけでなく、友人など周りの人に、口コミでサービスの良さを伝え、広げていってくれます。
プロダクトチームやマーケティングチームは、顧客エンゲージメントを測定し、分析ツールを利用してエンゲージメントを高める要因を把握することができます。顧客エンゲージメントを向上させることで、プロダクトの収益性を向上させることができます。
エンゲージメントの定義は、各社によってバラバラです。デイリーアクティブユーザー(DAU)、獲得単価(CPA)、費用対効果(ROI)などの指標は単純でわかりやすい方ですが、実際には企業のビジネスモデルによってエンゲージメントの定義は異なります。たとえば、ページビュー数はメディアサイトには適しているかもしれませんが、保険会社の自社アプリには適しません。
顧客ロイヤリティと顧客エンゲージメントの違い
顧客エンゲージメントが高くなった結果として、顧客のロイヤリティが発生します。プロダクトやサービスを使い始めた顧客は、顧客エンゲージメントが低く、あなたのサービスを利用するのをやめて他の競合サービスを利用するかもしれません。
しかし顧客エンゲージメントを高めていけば、顧客はあなたのサービスを好んで利用するようになります。さらに顧客エンゲージメントを高めていけば、最終的には他の競合を使うのをやめて、あなたのサービスだけを利用するようになるかもしれません。この段階にまで至れば、ロイヤル顧客になっていると言えるでしょう。
また顧客エンゲージメントを計測するためには、顧客の行動データを主に利用します。それに対して、顧客ロイヤリティを計測するためには、NPSアンケート(友人にどの程度オススメできるかを1~10の数値から選んでもらうアンケート)を利用します。
ユーザーエンゲージメントと顧客エンゲージメント
ユーザーエンゲージメントは、顧客エンゲージメントとほぼ同義の意味になります。ユーザーエンゲージメントはウェブサイトやアプリなど、オンラインサービスにおけるエンゲージメントを指すことが多いです。それに対して、顧客エンゲージメントはオンライン・オフラインに関わらず、サービス利用者(顧客)のエンゲージメントを指すことが多いです。
顧客エンゲージメントで見るべき指標
顧客エンゲージメントを計測するためには、自社サービスにとって何が顧客エンゲージメントと言えるのかを決める必要があります。たとえば、Eコマースを展開している小売店の場合、「リピート購入」という顧客の行動を、ポジティブなエンゲージメントとして定義することができます。他にもさまざまな指標が考えられますが、たとえば以下のような指標があげられます。
- メディアサイト:1日の閲覧回数、ページビュー、滞在時間、(ページ内)クリック数、(ページ内)検索回数、コメント数、シェア数
- 音楽アプリ:1日の利用回数、アプリ内滞在時間、フォローしている友だちの人数
- Eコマース店舗:リピート購入回数
- 個人向けファイナンスアプリ:週次の利用回数、通知設定のON/OFF、ダッシュボード表示回数
- 企業向けソフトウエア:毎月の使用量、ユーザーの招待数
またポジティブなエンゲージメントとは別に、利用停止やアプリの削除、利用プランのダウングレード、通知設定をオフにするなどのアクションをネガティブなエンゲージメントと定義し、トラッキングすることも重要です。
顧客が離脱していくサインとなる行動を把握できていると、数値を見ながらエンゲージメントを改善していくことができます。なおプロダクトチームのベンチマークとして、全ユーザーの平均アクティブ率を利用することもよくあります。
しかし、自社で独自にエンゲージメントデータを収集して分析するとなると、多大に時間や労力がかかってしまいます。そのため、多くの企業ではMixpanelのようなツールを利用してデータを収集し、分析が行われています。Mixpanelを使えば、プロダクト開発チームは専門家なしで、好きな時にデータを分析し、独自のレポートを作ることができます。これにより、企業は必要と思った時に、すぐにエンゲージメントデータを分析することができます。
顧客エンゲージメントを改善する方法
顧客にとっての価値を追求する
顧客は、あなたのサービスのどこに価値を感じているのでしょうか?銀行が提供しているアプリを使う時に得られるような利便性でしょうか。ネットバンキングアプリのような便利さでしょうか?それとも、割引情報サイトのような、ついつい横目で見てしまう楽しみでしょうか。顧客が感じている価値を把握するためには、顧客をセグメントで分けて、個人とコホート(セグメント)の両方の動きを追い、彼らがどんな行動を繰り返しているのかを把握することが重要です。これは「ゴールデンパス」や「カスタマージャーニー」と呼ばれます。
顧客が価値を感じている大事な瞬間を特定し、その瞬間をもっと提供するようにプロダクト変更をしていきます。
プロダクトを使いやすくする
エンゲージメントを高めることはマーケターの仕事と思うかもしれませんが、プロダクトの使いやすさ(ユーザビリティ)は、顧客エンゲージメントを高める最も重要な要素です。顧客はシンプルで使いやすいアプリやウェブサイトを期待しており、自分にとって使いやすいと感じるアプリやサイトを見つけるまで、いろいろなサービスを使ってみようとします。
カスタマージャーニーを分析し、顧客が離脱する要因となる瞬間を特定することで、プロダクトチームはユーザビリティの問題を発見し、修正することができます。
たとえばECサイトで、かなりのユーザーがチェックアウトページで離脱していることを見つけたとします。改善案として、登録なしでゲストとして支払いを完了できる選択肢を用意することや、デジタルウォレットで支払いができるようにする、などが考えられます。
ユーザーがつまずくポイントをなくしていくことで、プロダクトチームはユーザージャーニーを改善することができ、ユーザーにサービスの価値を見出してもらいやすくなります。同時に、プロダクトチームとしては、ユーザーがサービスを利用する理由をさらに与えることになります。ユーザーがアプリを頻繁に開くのであれば、ユーザーはアプリをより習慣的に利用していると考えられます。もしプロダクトチームが週次や月次ではなく、日次でアプリをもっと良いものにしていくことができれば、もっとユーザーはアプリを利用し、エンゲージしてくれるでしょう。
顧客を育てる(特に新規顧客)
顧客が気になっていることは、時間とともに変化していきます。プロダクトチームは、カスタマージャーニーを通じて、顧客を育てていくことができます。新規顧客は、まだサービスに対する第一印象ももっておらず、どんな価値があるのか知りたいと思っていることが多いです。数カ月後、利用者の専門家として、この顧客はまったく異なるニーズを持っているかもしれません。
プロダクトチームは、時間をかけて少しずつプロダクトの機能を見せていくことで、新規顧客と、経験のある優良顧客の両方をサポートすることができます。例えば、新規ユーザーにとっては高度な機能を、ボタンではなく目立ちにくいテキストリンクで導線を置くことによって、機能を目立たせないようにすることができます。こうすることで、新規顧客は多すぎる選択肢を見て戸惑うことがないまま、長く利用してくれている顧客に高度な機能を提供することができます。
新規顧客のオンボーディング(初めての利用)は重要なところです。顧客は、必要に迫られたのではなく、純粋な好奇心や、友人からの勧めでサービスを利用してみようと思ったのかもしれません。プロダクトチームは、顧客が価値をすぐに体験して理解するようにサービスを設計していく必要があり、そうでないと顧客が離脱してしまいます。
ストリーミングサービスであるNetflixは、最新のおすすめ映画を表示することで、新規顧客・リピーターの顧客両方が、サービスの価値をすぐに見つけられるようにしています。また他企業でも、アプリ内でメッセージを送る、チュートリアルを提供する、FAQを充実させる、チャットボットを実装する、など様々な手段で顧客のエンゲージメントを下げないようにする努力がなされています。
顧客とのコミュニケーションを大切にする
プロダクトチームやマーケティングチームは、顧客に直接、要望を聞くこともできます。リピーターの顧客は、自分が経験したことを教えてくれたり、新機能の要望を教えてくれたり、見つけたバグを熱心に共有してくれる人たちであることが多いです。プロダクトチームとマーケティングチームは、アプリ内の通知、アンケート、NPSなどを利用して、これらの顧客に直接質問することができます。アプリから離れ、連絡が取れなくなった顧客には、プロダクトチームがプッシュ通知を使って呼び戻すこともできます。
さいごに
このように、顧客がエンゲージしたと言える行動を定義・計測して指標を見て改善を重ねていくことで、顧客に愛されるアプリやサービスをデザインしていくことができます。顧客エンゲージメントは、マーケティングのみならず、プロダクト開発においても非常に重要な指標となることがわかるかと思います。
顧客エンゲージメントの指標を正確かつ迅速にトラッキングし、ユーザー行動データを効果的に分析するためには、堅牢なセルフサービス型の分析ツールが必要です。Mixpanel なら、顧客エンゲージメントを計測するだけでなく、そこから得られるインサイトを見ることで、次にどんな機能を実装すべきかをデータドリブンに決定することができます。ぜひ、無料版をこちらからお試しください。